中医学の脈診と鍼灸で整える正気
最近、高齢の方の脈をとると、沈んで緊張している脈の方が続いていました。
そこで、中医学からみる夏なのに寒邪に侵入される原因と対策をお伝えします。
【沈緊脈と浮緊脈:中医学の脈診でわかる体の冷え】
中医学の脈診は、脈の状態から体内の健康や病態を読み解く重要な診断法です。
沈緊脈と浮緊脈は、冷え(寒邪)が原因で現れる脈象ですが、それぞれ異なる病態を示します。
・沈緊脈:脈が深く(強く押さないと感じにくい)、弦のように張った状態。
寒邪が体内深部(特に脾胃)に侵入し、気血の流れを阻滞させていることを示します。
冷飲冷食によるお腹の冷えは、脾胃の陽気(温める力)を損ない、消化不良、腹痛、下痢、倦怠感などの症状を引き起こし、沈緊脈として現れます。
・浮緊脈:脈が浅く(軽く触れるだけで感じられる)、弦のように張った状態。
表寒邪(体の表面に侵入した寒邪)が原因で、夏の場合、エアコンの冷気により表面に寒邪が入った影響を示します。首筋や肩のこわばり、鼻水、頭痛、軽い発熱など、風邪の初期症状と関連します。
【夏の冷飲冷食と脾胃の冷え】
冷たい飲食物(冷飲冷食)の過度な摂取は、脾胃の陽気を損ないます。脾胃は消化吸収を司る臓腑で、陽気が不足すると以下の症状が現れます。
腹部の冷え感:お腹が冷たく体が重だるい。
腹痛や下痢:気血の流れが滞り、キリキリした痛みや緩い便。
四肢の冷えや倦怠感:陽気不足が全身に及び、手足の冷えや疲れやすさ。
これらの症状は、寒邪が脾胃に深く侵入し、脈診では沈緊脈として現れます。夏の冷飲冷食は、脾胃の機能を弱らせ、秋の体調不良の遠因となります。
【エアコンによる表寒邪と浮緊脈】
夏のエアコンの冷気は、表寒邪(体の表面に侵入する寒邪)を引き起こします。
皮膚や筋肉、経絡の表層に寒邪が停滞し、以下のような症状が現れます。
首や肩のこわばり:冷気で筋肉が収縮し、肩こりや首の重さ。
風邪の初期症状:鼻水、くしゃみ、喉の違和感、軽い発熱。
頭痛や関節痛:寒邪が経絡を塞ぎ、気血の流れが悪化。
肌の乾燥:冷房による乾燥が肺を弱らせ、皮膚や呼吸器の不調に繋がる。
これらの症状は、脈診で浮緊脈として現れます。
浮緊脈は、寒邪が体の表面に留まり、経絡や肺を侵している状態を反映します。
エアコンの冷気は特に、汗をかいた後に急激に冷やすと開いた毛穴から寒邪が侵入しやすくなり、夏風邪や体のだるさを引き起こします。
【夏の冷飲冷食とエアコンが秋に体調を崩す理由】
夏の冷飲冷食とエアコンの冷気は、脾胃と肺にダメージを与え、秋の体調不良を引き起こします。
脾胃の陽気不足(沈緊脈):冷飲冷食で脾胃が冷えると、気血を生み出す力が低下。夏のうちに作るべき気血が作られず秋の乾燥や気温低下で、消化不良、下痢、倦怠感がでる。
肺の防御力低下(浮緊脈):エアコンの表寒邪が肺を弱らせ、免疫力が低下。秋の乾燥で肺がさらに影響を受け、風邪やアレルギー、咳が起こりやすくなる。
気血の巡り悪化:寒邪による気血の滞りは、秋に冷え、関節痛、筋肉のこわばりを増悪させる。
夏の冷えが蓄積すると、秋の環境変化に対応できず、体調を崩すリスクが高まります。
【夏の冷飲冷食とエアコンの注意点】
・冷飲冷食の管理
冷たいものは少量にし、常温や温かい飲み物を優先。
空腹時や朝の冷たい飲食物は避け、生姜やシナモンなど温性食材を組み合わせる。
冷え性や消化器が弱い人は特に注意。
エアコンの冷気対策:エアコンの設定温度を26~28℃にし、冷やしすぎない。
汗をかいた後すぐ冷房に当たらない。汗を拭き、薄手の上着で体を保護。
首や肩を冷やさないよう、スカーフやカーディガンを使用。
室内の乾燥を防ぐため、加湿器や濡れタオルで湿度を保つ。
寒気を感じたら外に出て夏の暑さを利用して少し発汗させる。
【鍼灸治療でお腹の冷えと表寒邪を整える】
鍼灸は、脾胃の陽気を高め、表寒邪を散らし、体調を整えるのに効果的です。
・脾胃の冷え(沈緊脈)へのアプローチ
中脘(ちゅうかん)、足三里(あしさんり)脾胃の機能を高め、消化不良や腹痛を改善。
関元(かんげん)、気海(きかい)、神闕(しんけつ):お腹を温め、陽気を補充。灸の温熱刺激で脾胃を温め、気血の巡りを改善。
表寒邪(浮緊脈)へのアプローチ
風池(ふうち)、大椎(だいつい):首や肩のこわばりを緩和し、表寒邪を散らす。
肺兪(はいゆ)、合谷(ごうこく):肺の機能を高め、風邪症状や免疫力をサポート。
鍼で経絡の滞りを解消し、灸で体表を温める。
夏の時期は先ほども上げたように外に出て夏の暑さを利用して発汗させる。
全身のバランス調整
冷えが入りやすい、夏の暑さにばてやすい人は正気(体を維持する力)が不足していることを表しています。
身体が強い人は一つの目安として冷たいものをゴクゴクと一気に飲み干せる人です。(もちろん不摂生が過ぎれば病気が生まれます。)
高齢の方は気血を作り温める力が弱まり、少しの冷飲冷食で冷えやすくなります。沈緊脈が出ている方に話を聴くとアイス、冷飲をしていることがほとんどでした。
鍼灸により正気を強くして冷えや寒邪が他の臓腑に波及するのを防ぎ、秋の不調を予防します。
定期的な鍼灸は、夏の疲れを回復させ、秋の健康を支えます。
まとめ:夏のケアで秋の健康を守る
夏の冷飲冷食は脾胃を冷やし、陽気不足や気血の滞りを引き起こし沈緊脈として現れます。
一方、エアコンの冷気は表寒邪を招き浮緊脈として現れ風邪や肩こり、頭痛の原因に。
これらの冷えは秋に消化器不調、免疫力低下、冷えや関節痛として現れます。
冷飲冷食やエアコンの適切な管理と、鍼灸による脾胃と肺のケアで、秋の体調不良を予防しましょう!
おまけのアドバイス:温かいスープや生姜茶を飲み温める習慣を(舌が真っ赤な人は×)。
エアコン環境では首を冷やさないよう注意し、鍼灸治療を活用して季節の変わり目に強い体を作りましょう!