中医学(中国伝統医学)には、体のバランスを整える「気」と「血」という重要な概念があります。
前回の記事で「血」の働きや「血虚(けっきょ)」について紹介しましたが、今回は「気実血虚(きじつけっきょ)」という特定の状態について、初心者向けに分かりやすく説明します。
【「気実血虚」って何?】
「気実血虚」は、気(き)が過剰(実)で、血(けつ)が不足(虚)している状態を指します。
中医学では、「気」は体のエネルギーや活動力を、「血」は栄養や潤いを司ると考えます。
この二つのバランスが崩れると、さまざまな不調が現れます。
気実(きじつ):気が過剰で、流れが滞ったり、特定の場所に溜まりすぎたりしている状態。
例えるなら、「エネルギーが有り余って暴走している」イメージです。
ストレスやイライラ、体の緊張などが原因で起こりがち。
血虚(けっきょ):血が不足して、体に栄養や潤いが足りない状態。
肌や髪のパサつき、疲れやすさ、めまいなどが典型的な症状。
「気実血虚」は、この「気の暴走」と「血の不足」が同時に起こっている状態です。
例えるなら、エンジンはフル回転(気実)なのに、ガソリン(血)が足りない車のようなもの。
体が頑張りすぎる一方で、栄養が追いつかず、バランスが崩れてしまうのです。
【なぜ「気実血虚」になるの?】
気実血虚になる原因は、現代生活でもよくある以下のようなことが関係します
ストレスや過労:ストレスが溜まると、気が滞って「気実」の状態に。気が張っていてがんばれる一方、血が消費されていく。イライラや緊張が続き、エネルギーが暴走しがち。暴走は血をさらに消費します。
栄養不足や偏った食事:血を作るための栄養(鉄分やビタミンなど)が足りないと、血虚に。
例:ダイエットや偏食、忙しくて食事がおろそかに。血が弱ると相対的に気が高ぶります。
睡眠不足:睡眠は血を養う大切な時間。夜更かしや睡眠の質が悪いと、血が不足しやすくなります。
生理や出産(女性の場合):女性は月経や出産で血を失いやすく、血虚になりやすい。特にストレスが重なると、気実血虚に拍車がかかることも。
【「気実血虚」でどんな不調が起こる?】
気実血虚は、気の実(過剰)と血の虚(不足)が混ざった状態なので、症状もちょっと複雑。
以下のような不調が現れます
・イライラや不安感+疲れやすさ
気実の影響で、イライラしたり、胸がモヤモヤしたり、緊張感が続くことがあります。でも、血虚のせいで体は疲れやすく、「なんかやる気はあるのに体が重い!」というちぐはぐな状態に。気実が強いと疲れを感じないことも。
例:仕事でイライラするけど、すぐにクタクタになる。疲れを感じにくいがほっとするとどっと疲れる。
・肌や髪のトラブル+体の緊張
血虚で肌がカサカサ、髪がパサパサ、爪がもろくなる一方、気実のせいで肩こりや頭痛、筋肉のこわばりが起こりがち。「肌が荒れてるのに、肩がガチガチでつらい」なんて人は要注意。
・めまいや動悸+胸の圧迫感
血虚によるめまいやふらつき、動悸(心臓がドキドキ)に加え、気実のせいで胸が詰まるような感じや息苦しさが出ることも。「立ち上がるとクラッとするけど、胸がモヤモヤする」みたいな症状。
・睡眠トラブル
気実で心が落ち着かず、寝つきが悪かったり、血虚で夜中に目が覚めたり。「寝ようとしても頭がザワザワして眠れない」なんて経験、ありませんか?
・月経トラブル(女性の場合)
血虚で生理の量が少なかったり、周期が乱れたりする一方、気実の影響で生理前にイライラや胸の張りが強くなることも。「生理前はイライラMAXなのに、生理が来ると量が少ない、生理後にぐったりする」なんていうのはサインかも。
【「気実血虚」を改善するには?】
気実血虚を改善するには、気の流れを整えつつ、血を補うことが大切です。初心者でも取り入れやすい方法を紹介します
・気を整えるリラックス法
気実の原因はストレスや気の滞り。深呼吸、瞑想、軽いストレッチ、ヨガなどで心と体をリラックスさせましょう。
例:寝る前に5分間、ゆっくり深呼吸する。
・血を養う食材を食べる
血虚を改善するには、血を補う食材が◎。レバー、ほうれん草、なつめ、クコの実、黒豆、赤身の肉などを積極的に。
例:なつめをスープに入れる、クコの実をおやつに。
・十分な睡眠を確保(特に重要)
血は睡眠中に養われます。夜11時前には寝るのが理想。スマホを早めにオフにして、リラックスできる環境を整えて。
眠れない時は眠れなくても目をつぶりじっとしているだけでも血は養われます。眠れないと焦らないことが大事。
・適度な運動で気を巡らせる
ウォーキングやストレッチで気をスムーズに。やりすぎると血を消耗するので、軽い運動を心がけて。
例:15分の散歩で気分スッキリ!
・ストレス管理
気実の大きな原因はストレス。趣味の時間や友達とのおしゃべりで気分転換を。イライラしたら、好きな音楽を聴くのもいいですよ。
まとめ「気実血虚」は、気が過剰で暴走しているのに、血が足りず体が栄養不足になる状態。イライラや肩こりと、疲れやすさや肌荒れが同時に起こるのが特徴です。ストレスを減らし、血を養う食事を心がけ、十分な睡眠を取ることで、体と心のバランスが整います。
ほっておくと躁鬱状態に陥ることもあるので早めに対策を。
次回は鍼灸で気実血虚を治療する方法を解説します。