中医学の「気実血虚」と鍼灸での治療について

2025年08月09日 18:16

前回、「気実血虚(きじつけっきょ)」について、気が過剰(気実)で血が不足(血虚)する状態やその不調、改善方法を解説しました。
今回は、「気実血虚」に対する鍼灸(しんきゅう)治療に焦点を当て、初心者にも分かりやすく説明します。

気実血虚のおさらい
「気実血虚」は、気(体のエネルギー)が過剰に溜まったり滞ったり(気実)しつつ、血(栄養や潤い)が不足(血虚)している状態です。例えるなら、「エンジンがフル回転なのにガソリンやオイルが足りない車」のようなもの。症状としては、イライラや肩こり(気実)と、疲れやすさ、肌のパサつき、めまい(血虚)が混在します。
原因はストレス、栄養不足、睡眠不足、過労などです。

鍼灸は、中医学の理論に基づき、体のバランスを整える治療法。
気の実を落ち着かせ、血の不足を補うアプローチで、気実血虚の不調を改善します。
では、どんな治療をするのか、具体的に見ていきましょう!

【鍼灸で「気実血虚」をどう治療する?】

鍼灸は、細い鍼(はり)やお灸(きゅう)を使って、体の「ツボ」を刺激し、気や血の流れを整える治療法です。
気実血虚の場合、以下の二つの目標を同時に目指します
・気実を解消:過剰な気を落ち着かせ、滞りを解消してスムーズに流れるようにする。
・血虚を改善:血を養い、全身に栄養や潤いを行き渡らせる。

具体的な治療の流れや方法を、初心者向けに分かりやすく説明します。
1. カウンセリングで状態を把握
鍼灸治療の前に、鍼灸師は詳しく話を聞いて体の状態をチェックします。
脈を診たり、舌の色や形を見たり(中医学の「脈診」「舌診」)して、気実と血虚の程度を確認します。
例:脈が強く張っている(気実)、舌が薄くて白っぽい(血虚)など。
体表観察でツボや経絡の状態をチェックします。

2. 気実を解消するツボへのアプローチ
気実の状態(気の滞りや過剰)は、イライラ、肩こり、胸の圧迫感などを引き起こします。
鍼灸では、気の流れをスムーズにするツボを刺激します。
よく使われるツボの例
・合谷(ごうこく):手の親指と人差し指の間のツボ。ストレスやイライラ、頭痛を和らげる。「ストレスで頭がガチガチ」の人に効果的。
・太衝(たいしょう):足の親指と人差し指の間のツボ。気の滞りを解消し、イライラや胸のモヤモヤを落ち着かせる。「生理前のイライラ」にGOOD。
・内関(ないかん):手首の内側のツボ。胸の圧迫感や動悸、不安感を和らげる。「なんか胸が詰まる感じ」に効く。

3. 血虚を改善するツボへのアプローチ
血虚の状態(血の不足)は、疲れやすさ、めまい、肌や髪のパサつきを引き起こします。血を養い、栄養を全身に届けるツボを刺激します。
よく使われるツボの例
・三陰交(さんいんこう):足の内くるぶしの上にあるツボ。血を養い、疲れやめまい、生理トラブルを改善。「肌がカサカサ」「生理が少ない」に効果的。
・血海(けっかい):膝の内側にあるツボ。血を補い、肌や髪に潤いをもたらす。「髪がパサつく」「爪がもろい」人にピッタリ。
・足三里(あしさんり):膝の下にあるツボ。消化吸収を助け、血を作る力を高める。「疲れやすい」「胃腸が弱い」人に効く。

4. 全身のバランスを整える
気実血虚は、気と血のバランスが崩れた状態なので、全身の調和も大切。
鍼灸治療は、背中やお腹にある「経絡(けいらく)」という気の通り道を刺激し、全体の流れを整えます。

・背部兪穴(はいぶゆけつ):背中のツボで、臓器の働きを整え、気と血のバランスをサポート。
・関元(かんげん):おへその下のツボで、全身のエネルギーを底上げし、血虚を補う。

これらのツボを組み合わせ、体の「気実」を落ち着かせつつ「血虚」を補うのが、気実血虚の鍼灸治療のポイントです。

5. 治療の頻度と効果
治療は通常、1週間に1~2回からスタートし、症状の改善に合わせて頻度を調整します。1回の治療で「イライラが落ち着いた」「体が軽くなった」と感じる人もいれば、数回で肌のツヤや睡眠の質が良くなる人も。気実血虚は慢性的な場合も多いので、継続的な治療と生活習慣の改善を組み合わせると効果的です。

鍼灸治療のイメージ「鍼灸って痛そう」「熱そう」と心配する人もいるかもしれませんが、実際はリラックスできる時間。
治療の流れはこんな感じ:カウンセリングで症状を話す(10~15分)初診は1時間
ベッドに横になり、鍼やお灸をツボに(15~40分)

鍼灸と一緒に、以下の生活習慣を取り入れると、気実血虚の改善が早まります。
・血を養う食事:レバー、ほうれん草、なつめ、クコの実、黒豆を。例:なつめスープでほっこり。
・ストレス解消:深呼吸や軽いヨガで気をスムーズに。「イライラしたら深呼吸5回」を習慣に。
・質の良い睡眠:夜11時前に寝て、血をチャージ。スマホは早めにオフ。
・適度な運動:ウォーキングやストレッチで気と血の巡りを良く。

まとめ
気実血虚は、気の過剰(気実)と血の不足(血虚)が混ざった状態で、イライラや肩こり、疲れやすさ、肌荒れなどが特徴。鍼灸治療では、合谷や太衝で気を落ち着け、三陰交や血海で血を養い、全身のバランスを整えます。
「体がなんか変」と感じたら、鍼灸を試してみて!
鍼灸治療を受けつつ、食事や睡眠も見直すと、元気でイキイキした体に近づけますよ。

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