今年の夏は暑すぎ、秋になっても暖かい日が続いています。
こういう季節を中医学において「大過」といいます。
例年の季節より暑すぎる、寒すぎるなどの大過の年は、その影響に身体が対応できず、次の季節にバランスを崩しやすくなります。
この暑すぎた夏はどう影響するか解説いたします。
夏の暑さ(陽気の大過)は、体内の「気」や「津液(しんえき)」を過度に消耗させ、秋になってその影響が顕在化することがあります。
【夏の暑さの影響】
1、津液の消耗
夏の高温多湿は「暑邪(しょじゃ)」として体内に侵入し、汗を過剰に出すことで津液(体内の水分や栄養を司る液体)を消耗します。これにより、体内は「陰虚(いんきょ)」状態、つまり水分や滋養が不足する傾向になります。
2、気の乱れ
暑さは「心(しん)」の機能を過剰に刺激し、精神的な不安やイライラ(心火亢進)を引き起こすことがあります。また、暑さによるエネルギー消耗は「気虚(ききょ)」を招き、疲労感やだるさが現れやすくなります。
【五行の季節的つながり】
中医学の五行説では、夏は「火(心)」の季節、秋は「金(肺)」の季節です。夏の暑さの大過が心や小腸に負担をかけると、秋に「肺」や「大腸」の不調(例えば、乾燥による咳、便秘、皮膚の乾燥など)として現れやすくなります。これは「火」が「金」を剋す(こくす)関係によるものです。
【秋に現れる具体的な症状】
夏の暑さの大過が秋に影響すると、以下のような症状が現れることがあります。
・肺の乾燥症状:津液不足による咳、喉の渇き、鼻や皮膚の乾燥。
・消化器系の不調:暑さによる脾胃(消化機能)の弱りが、秋に食欲不振や便秘、下痢として現れる。
・疲労感や虚弱:気虚によるだるさ、集中力低下、免疫力の低下。
・精神的な影響:心のバランスの乱れから、秋に不安感や気分の落ち込みが強まる。
【中医学的対策】
・津液を補う
秋は「燥(そう)」の季節であり、夏の津液消耗を補うため、白キクラゲ、スイカ、梨、蜂蜜など潤いを与える食材を摂取する。
・肺を養う
秋は肺を強化する季節。百合根や山芋、蓮根など、肺を滋養する食材を取り入れ、深呼吸や軽い運動で肺気を高める。
・気の巡りを整える
適度な運動や、香りの良いハーブ(例:ミント、菊花茶)で気を巡らせ、ストレスを軽減する。
・生活習慣の調整
早寝早起きを心がけ、秋の乾燥から身を守るため、部屋の加湿や十分な水分補給を行う。
まとめ夏の暑さの大過は、津液や気の消耗を通じて体のバランスを崩し、秋に肺や消化器、精神面の不調として現れます。中医学では、季節の移行に合わせて体を養い、バランスを整えることでこれを防ぎます。具体的には、潤いを与える食材や生活習慣の調整が効果的です。
次回は生活習慣の調整で整えきれない、不調が出てしまったときの鍼灸治療を紹介いたします。